帰国とその後

帰国子女の高校受験、公立にも帰国生入試がありました|出願資格の調べ方

帰国子女の高校受験、公立にも帰国生入試がありました|出願資格の調べ方

前に、帰国子女の高校受験について書きました。帰る時期と帰る場所で、内申点の扱いが変わるという話です。

帰国子女の高校受験は「帰る時期」と「帰る場所」で変わります

その続きです。今回は、そもそも帰国生入試に出願できるのかを確かめました。

正直に書くと、わたしはこれまで志望校のホームページしか見ていませんでした。見ていたのは、私立高校のページです。

そこには「2年以上」と書かれていました。わが家はもう満たしています。だから、起算日のような細かいところは気にしなくていいと思っていました。

教育委員会の要項を読んでみたら、まったく違いました。

そもそも、公立にも帰国生入試がありました

いちばん驚いたのは、ここでした。

わたしは、帰国生入試は私立学校にしかないと思っていました。

理由は、はっきりしています。帰る地域が決まっていなかったからです。

わが家には持ち家がありません。夫の転勤で、住む場所が変わります。日本のどこに帰るかが決まらなければ、公立高校は探しようがありません。

しかも、帰任の予定はもっと先だと思っていました。ですので、子どもが日本の高校に進む場合は、寮のある学校に絞って考えていました。どこに住むことになっても通えるからです。

その結果、公立という選択肢を、はじめから外していました。

でも実際には、都道府県が要項を出して、公立高校でも実施しています。 調べたところ、実施している学校の数はこうでした。

実施している高校の数
東京都 4校
神奈川県 8校
千葉県 20校(県立・市立)

数は多くありません。でも、あることを知らなければ、はじめから選択肢に入りません。

私立だけを見ていたわたしは、その時点で選べる範囲を狭めていました。

出願資格は「◯年以上」では終わりませんでした

では、その公立の要項には何が書かれているのか。まず、東京都の要項を読んでみます。令和7年度の海外帰国生徒対象の選抜です。

条文には、こう書かれていました。

保護者に伴った外国における連続した在住期間が2年以上3年未満の者(連続した2箇学年の課程を修了する見込みの者又は既に修了した者を含む。)で、入学日現在当該海外在住期間終了後1年以内の者。

一度で読み取れませんでした。整理すると、こうなります。

外国での連続した在住期間 帰国後、使える期間
2年以上3年未満 1年以内
3年以上4年未満 2年以内
4年以上 3年以内

出典:東京都教育委員会「海外帰国生徒等入学者選抜実施要綱」

「2年以上いればいい」ではありませんでした。 何年いたかで、帰国後に受験できる期間が変わります。

つまり、階段になっているのです。

読み終えて、いちばんに思ったのは「ちょうど2年の人は、どうなるんだろう」でした。

わが家は年数に余裕があります。でも、赴任が2年きっかりで終わる家庭は、めずらしくありません。その場合は、いつから数えるかで結果が変わります。 ここは確認が要るところだと思いました。

数か月の違いで、使える期間が1年変わります

ここに気づいたとき、少しひやりとしました。

たとえば東京都の場合、在住期間が2年11か月なら「2年以上3年未満」です。帰国後1年以内に受験しなければなりません。

3年1か月なら「3年以上4年未満」になります。帰国後2年以内です。

2か月の違いで、1年変わります。

駐在は、数か月ずれます

これは、他人事ではありませんでした。

駐在の帰国時期は、辞令で決まります。わが家も、いつ帰るかで家族の話し合いが続いています。

数か月ずれるのは、めずらしくありません。会社の都合、後任の着任、子どもの学年の区切り。いろいろな事情で前後します。

その数か月が、受験できる期間を1年変えることがある。 わたしは、まったく気づいていませんでした。

県によって、階段の刻み方が違います

さらに調べると、刻み方は県ごとに違いました。

在住期間と、帰国後に使える期間 実施校
東京都 2〜3年→1年以内/3〜4年→2年以内/4年以上→3年以内 4校
千葉県 2〜4年→1年以内/4年以上→2年以内 20校(県立・市立)
神奈川県 継続2年以上(階段なし)。帰国日が基準日以降であること 8校

出典:千葉県教育委員会「令和8年度千葉県公立高等学校入学者選抜実施要項」神奈川県「海外帰国生徒特別募集の概要」

同じ「3年の駐在」でも、帰る県で扱いが変わります。

東京都なら「3年以上4年未満」で帰国後2年以内。千葉県なら「2年以上4年未満」で帰国後1年以内。神奈川県なら階段がなく、2年以上あれば条件を満たします。

前の記事で、内申点の計算方法が県で違うと書きました。出願資格も同じでした。

公立にも帰国生入試があると知り、さらに県ごとに条件が違うと知る。知らないことが二重にありました。

学区を越えられる県もあります

もうひとつ、意外だったことがあります。

京都府の帰国生の選抜は、府内全域から志願できます(通学区域を越えて志願する場合は、手続きが必要です)。募集人員は各校5人以内と少ないですが、住む場所が府内であれば、学区にしばられません。

出典:京都府教育委員会「令和8年度京都府公立高等学校入学者選抜について」

「住所が決まらないから公立は無理」とは、限りませんでした。 帰る県さえ決まれば、その中では選べる幅があることになります。

そもそも「別枠の入試」がない県もあります

もうひとつ、大事なことが分かりました。

帰国生の受け入れ方は、大きく3つのタイプに分かれます。

タイプ どういう形か
1. 別枠の入試 帰国生だけの選抜を、一般とは別に実施する
2. 推薦入学の枠組み 帰国生の推薦入学として、国際に関する学科などで実施する
3. 受検上の配慮 別枠の募集はせず、一般選抜のなかで配慮する

3のタイプでは、募集定員の枠外で選抜したり、試験時間を延ばしたり、問題の漢字にふりがなを付けたりします。国語と社会に替えて、作文と面接にする県もありました。

2のタイプは、在住期間の条件が1年以上と短い県もあり、海外に住んだまま出願できるところもありました。

中身は県によってまったく違います。「帰国子女枠があるかどうか」だけでは語れませんでした。

わたしは「帰国生入試」という言葉で探していました。でも、その言葉で探しても出てこない県があります。

帰る県によっては、「枠」を探しても見つからないことがあります。その場合は、一般選抜の中で何をしてもらえるのかを調べることになります。

日本人学校か、現地校かで、意味が変わります

ここまで見てきた配慮は、どれも日本語のハンディを埋めるためのものでした。国語を外す。時間を延ばす。漢字にふりがなを付ける。辞書を持ち込めるようにする。

でも、日本人学校には国語の授業があります。

日本の中学校と同じ課程で、定期考査もあります。学校によっては、問題の量が日本より多いこともあります。得意な子もいれば、苦手な子もいる。そこは、日本の学校に通っているのと同じです。

つまり、「海外にいた=日本語が弱い」という前提は、日本人学校に通っている子には当てはまりません。

制度の側も、そこを分けていました

ある都県では、同じ選抜でも出身校で検査の中身が違いました

出身 検査
日本人学校 国語(作文を含む)・数学・英語の3教科+面接
現地校 作文+面接のみ

さらに、日本人学校の出身者を、そもそも対象から外している県もありました。 要項には「認定された在外教育施設以外で学んだ海外帰国生徒」が対象、と書かれています。

理屈は通っています。日本人学校は日本の中学校と同等の課程なので、配慮は要らないという設計です。

確かめるのは「その配慮が、自分に効くか」

「帰国子女枠がある」と分かっても、それで終わりではありませんでした。

  • その配慮は、うちの子に意味があるか
  • そもそも、出身校の種類で対象から外れないか

日本人学校に通っているなら、一般選抜で普通に受けるほうが実力どおりになることもあります。逆に、英語力のような強みを評価してほしいなら、私立の帰国生入試のほうが合うかもしれません。

「枠があるか」ではなく、「その枠は自分に向いているか」。 ここまで読んで、やっと考えられるようになりました。

枠は余っていました

「制度があるのは分かった。では、入りやすいのか」

ここは印象で語りたくなかったので、実際の数字を見ました。千葉県が、志願者の数を公表しています。

令和8年度・海外帰国生徒の特別入学者選抜(千葉県)

実施 19校24学科
募集人員の目安(県立20校) おおむね115名以内
実際の志願者 6校6学科へ26人

前の年度は、13校14学科へ33人でした。

出典:千葉県「令和8年度 入学志願者確定数について」千葉県「入学許可候補者の予定人員について」

枠がおよそ115に対して、志願者は26人。 しかも、その26人が6校に集まっています。残りの13校には、志願者がいませんでした。

ただし、「入りやすい」とは書けません

数字だけ見ると、ずいぶん空いています。でも、そのまま受け取ってはいけないと思いました。

  • 「おおむね◯名以内」は目安で、定員ではありません。人数が集まらなければ、その分を必ず取るとは限りません
  • 志願は、一部の学校に集まります。 人気のある学校では、当然に競争が起きます
  • 学力検査は課されます。 千葉県は国語・数学・英語の3教科と面接です。無条件ではありません
  • 合格ラインは公表されていません

それでも、別枠である以上、一般選抜の競争とは切り離されています。 そこは知っておいていいと思いました。

保護者が一緒に住むことが条件の県があります

ここが、いちばん見落としていたところです。

東京都の要項には、こう書かれていました。

なお、都内に志願者と同居する保護者(中略)については、以下の場合も含む。
保護者が父母である場合、父母のどちらか一方が特別の事情により帰国できないときは、父又は母のどちらか一方が帰国し、都内に志願者と同居すればよい。

つまり、親のどちらかが、子どもと同じ都内に住むことが前提になっています。

さらに、こういう規定もありました。

特別の事情により保護者が帰国できず、志願者のみが帰国する場合は、保護者に代わる都内在住の身元引受人がいて、かつ、保護者(中略)が志願者の入学後1年以内に帰国し、都内に志願者と同居することが確実であること。

駐在は、親子がばらばらに帰ることがあります

わたしは、この状況をまったく考えていませんでした。

駐在では、父親だけが先に帰国することがあります。わが家も、いままさにその可能性のなかにいます。

そのとき、父親が帰る場所と、子どもが受験する場所が違ったらどうなるのか。母親が海外に残っていたらどうなるのか。

要項には、そこまで書いてありました。 読まなければ、気づかないままでした。

なお、親子が別々に暮らすことになれば、住まいの費用も二重にかかります。帰国後にお金がどう変わるかは、こちらに書いています。

本帰国の家計、何から見積もる?手取りが「2段階」で下がる仕組みと項目リスト

要項に書かれていなかったこと

一方で、読んでも分からなかったことが2つあります。

1. 在住期間の起算日

「連続した在住期間が2年以上」と書かれていますが、いつから数えるのかが書かれていません。

出国した日からなのか。現地の学校に入った日からなのか。千葉県は「帰国時から遡り継続して」とあるので、終わりは帰国日のようです。でも、始まりは明記されていませんでした。

2. 一時帰国したときの扱い

連続した在住期間」の「連続」が、どこまでを指すのかも書かれていません。

駐在中は、年に何度か日本に帰ります。わが家は年2回です。この一時帰国で「連続」が途切れるのかどうか、要項からは読み取れませんでした。

常識的には途切れないと思います。でも、受験は思い込みで進められません。

だから、聞くことにしました

わたしはこれまで、問い合わせたことがありませんでした。志望校のホームページを見て、それで終わりにしていました。

聞くなら、こういう形になると思います。

  • 在住期間は、いつからいつまでを数えますか
  • 一時帰国は、連続した在住期間に影響しますか
  • 帰国後の期間は、何を基準日に数えますか(住民票の異動日、入国日など)
  • 保護者が子どもと別の場所に住む場合、出願できますか

公立なら各都道府県の教育委員会、私立なら学校が窓口です。

駐在中の、いまやっておくこと

要項を読んで、いまからできることが分かりました。

1. 出国日と帰国日が分かるものを残しておく

パスポートの証印、在留届、航空券の記録。あとから「いつからいつまで海外にいたか」を示せるようにしておきます。

在留証明も、住んだ期間を証明する書類です。一時帰国のときに使える制度と一緒に、こちらに書きました。

一時帰国の準備は「予定を入れる」から始まります|年2回・駐在3年のやることリスト

2. 志望校のHPだけで済ませない

わたしの失敗はここでした。公立を考えるなら、教育委員会の要項が大元です。

3. 受験する年度の要項で確かめる

要項は毎年出ます。この記事に書いた条件も、年度が変われば変わります。いま読むのは全体像をつかむためと割り切って、最後は受験年度のもので確かめます。

まとめ

帰国生入試の出願資格について、分かったことを5つにまとめます。

  1. 公立にも帰国生入試がある。 帰る地域が決まらないと、公立は探しようがありません。だからわたしは、はじめから外していました。でも、県さえ決まれば選択肢に入ります
  2. 「2年以上」では終わらない。 在住期間が長いほど、帰国後に使える期間も長くなる「階段」になっている県があります。刻み方も受け入れ方も県で違います
  3. 配慮の中身が、自分に効くとは限らない。 多くは日本語のハンディを埋めるものです。日本人学校の出身者は、対象から外れる県もありました
  4. 枠は、思ったより空いている。 ある県では、枠およそ115に対して志願者は26人でした。ただし学力検査はありますし、志願は一部の学校に集まります
  5. 要項には書かれていないことがある。 起算日と一時帰国の扱いは、教育委員会に聞くしかありません

そして、いちばん伝えたいのはこれです。

志望校のホームページだけでは、足りませんでした。

わたしは3年目にして、やっと要項を読みました。帰る場所が決まっていないから、と後回しにしていました。 でも、全体像だけでも先に知っておけば、帰る時期の話し合いも違っていたと思います。

同じように悩んでいる方の、参考になればうれしいです。


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※本記事は2026年9月時点で公開されている要項にもとづいています。引用したのは東京都は令和7年度、千葉県は令和8年度のものです。

入学者選抜の要項は毎年改定されます。 また、ここに挙げたのは3つの都県の例で、すべての自治体が同じではありません。実際に出願される際は、受験する年度の要項を、各都道府県の教育委員会または志望校で必ずご確認ください。

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かなママ
かなママです。夫と、中学生・小学生の子ども2人の4人家族。 夫の転勤で海外に帯同中です。本帰国の辞令が出て、いま「いつ帰るか」を家族で考えているところです。 大学の法学部在学中に行政書士試験に合格し、ロースクールを卒業。その後、約11年間公務員として働きましたが、体調を崩したことをきっかけに退職しました。海外にいながら日本の仕事をする働き方も、実際に試しています。 家計管理歴14年、資産運用歴7年。FP2級・簿記検定3級を取得しています。リベシティセミナーの講師実績もあります。 赴任前の準備、駐在中のNISAや年金、帰国後の家計の立て直し。自分が実際に迷ったことを、実体験と実額で書いています。家計のご相談も受けつけています。