夫に海外赴任の辞令が出たとき、会社からNISAの説明はありませんでした。
住居のこと、保険のこと、引っ越しのことは案内があります。でも、自分で積み立ててきたお金がどうなるかは、誰も教えてくれません。
だから、自分で調べるしかありませんでした。
そして調べていて分かったことがあります。この分野は、ネット上の情報がかなり古いままです。
いまは、そうとは限りません。 制度も、証券会社の対応も、この2年でかなり変わりました。
この記事でわかることは、次の4つです。
- 制度がどう変わってきたか
- 出国前にしかできない手続きがあること
- SBI証券と楽天証券で、条件がどう違うか
- 2027年から始まる「こどもNISA」はどうなりそうか
2026年9月時点で調べた内容をまとめました。
昔は「解約するしかない」でした
まず、制度の移り変わりから整理します。
| 時期 | 状況 |
|---|---|
| 2019年度の税制改正より前 | 非居住者になると、NISA資産をすべて課税口座へ払い出す必要があった |
| 2019年度の税制改正 | 条件付きで、最長5年はNISA口座のまま保有できるようになった |
| 2024年ごろまで | 制度はあるのに、対応する証券会社がごく一部だった |
| 2024年末〜2025年 | SBI証券・楽天証券が相次いで対応・拡充 |
見ていただくと分かるように、変わったのはごく最近です。
わたしが出国したときは条件が厳しく、調べても継続保有は難しい状況でした。当時は「そういうものだ」と思っていました。
でも、いまは違います。
そしてここが問題なのですが、ネット上には当時のままの情報がたくさん残っています。 「海外赴任 NISA」で検索して上位に出てくる記事も、2024年前半に書かれたものが少なくありません。
古い情報を見て諦めている方が、たくさんいると思います。
いまは、出国前の手続きで最長5年つづけられます
制度の中身です。
「非課税口座継続適用届出書」を出国前に提出すれば、最長5年間、NISA口座のまま非課税で保有できます。
ポイントを整理します。
- 提出は出国前。 楽天証券は「出国の前日まで」と明記しています
- 届出書の受入日から、最長5年後の年末まで継続保有できます
- 出国期間中の新規買付はできません(NISA制度上、法令で認められていません)
- 常任代理人の選任が必要です(両社とも)
- 帰国したら「帰国届」の提出が必要です
そこがいちばんの注意点です。出国してからでは間に合いません。
辞令から出国までは、あっという間です。住居の手配や引き継ぎで頭がいっぱいになります。その時期に、証券口座のことまで思い出せるかどうか。
わたしはここを、いちばん強くお伝えしたいと思っています。
「新規買付ができない」の意味
見落とされがちですが、これは積立が止まるということです。
毎月コツコツ積み立ててきた方は、赴任している数年間、その積立が空白になります。 保有は続けられますが、買い増しはできません。
帰国後に再開することになるので、その前提で家計を組み直す必要があります。
SBI証券と楽天証券は、どう違うのか
利用者の多い2社について、公式情報をもとに整理しました。
| SBI証券 | 楽天証券 | |
|---|---|---|
| 対応 | 2025年1月から | 2024年12月に対象商品を拡充 |
| 継続保有できる商品 | 国内株式・ETF・REIT、投資信託、米国株式、その他海外株式 | 国内株式、外国株式、投資信託、国内債券、外国債券など |
| 出国期間の上限 | 6年未満(米国は183日以上6年未満) | 5年以内 |
| 出国1年未満のとき | 1年以上から対象 | 手続き不要で継続できる |
| 提出期限 | 出国前 | 出国の前日まで |
| 常任代理人 | 必要 | 必要 |
| 対象になる人 | 本人、帯同する配偶者 | 本人、帯同する配偶者、公務による出国 |
特に気をつけたい違い
① 期間の上限が違います
SBI証券は6年未満、楽天証券は5年以内です。駐在が延びたときに効いてきます。
② 1年未満の出国の扱いが違います
楽天証券は「出国期間が1年未満なら手続き不要」と明記しています。短期の赴任なら、こちらのほうが手続きが楽です。
③ どちらも「帯同する配偶者」は対象です
これは両社の公式ページにはっきり書かれています。駐在に帯同する配偶者名義の口座も、同じ手続きで継続できます。
一方で「自己都合の出国」や「留学」は対象外です。会社の命令による赴任であることが条件になります。
「オルカン」「S&P500」は継続できるのか
ここが、いちばん知りたいところだと思います。
先に結論を書きます。公表されていません。
両社とも「投資信託は継続保有できる」としています。でも、具体的なファンド名の一覧は、どちらも公表していません。
そして両社ともこう注記しています。
出国先の税法・規制等により継続保有できない場合があります
つまり、「赴任先の国」と「証券会社」の組み合わせで変わるということです。中国とアメリカでも違いますし、SBIと楽天でも違う可能性があります。
調べても答えは出ませんでした。 これは情報が隠されているわけではなく、赴任先ごとに規制が違うため、一律に公表できないのだと思います。
分かっているのは、SBI証券のFAQに「MMF/MRFは保有対象外」という記載があることくらいです。
だから、こう確認してください
保有している銘柄と、赴任先の国を伝えて、証券会社に直接聞いてください。
これが唯一の方法です。「投資信託は大丈夫らしい」で済ませないでください。
問い合わせるときは、この3つを伝えると話が早いです。
- 赴任先の国
- 保有している銘柄(投資信託・株式それぞれ)
- 出国予定日と、帰国予定の時期
2027年から始まる「こどもNISA」はどうなる?
ジュニアNISAが2023年で終わり、その後継として2027年1月から「こどもNISA」が始まります。
2025年12月19日の令和8年度税制改正大綱で、正式に決まりました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開始 | 2027年1月(楽天証券は2026年10月から口座開設受付予定) |
| 対象 | 0〜17歳 |
| 年間投資枠 | 60万円 |
| 非課税保有限度額 | 600万円 |
| 非課税期間 | 無期限(ジュニアNISAは5年) |
| 投資できる商品 | 投資信託のみ |
| 払出し | 12歳以上から条件付きで可能(ジュニアNISAは18歳まで原則不可) |
ジュニアNISAの使いにくかったところが、かなり解消されています。特に非課税期間が無期限になったこと、18歳まで引き出せない縛りがなくなったことは大きな変更です。
ただし、駐在家庭の扱いはまだ分かりません
両社の公式ページを見ましたが、居住者要件や非居住者の扱いについての記載はありませんでした。
いま分かっているのは、この2つだけです。
- NISAはもともと、日本国内の居住者向けの制度です
- 今回ご紹介した「継続」の仕組みも、対象は本人と帯同する配偶者で、子どもについての記載がありません
このことから、駐在中に新規で開設するのは難しい可能性があります。
ただし、制度も証券会社の対応も、まだ始まっていません。 断定はできません。
駐在家庭は、帰国してから検討するのが現実的だと思います。証券会社の案内が出るのを待ちましょう。
見落としやすい3つのこと
ここまでの内容を、注意点として整理します。
① 子ども名義の口座は、別に確認が必要です
両社とも「本人」と「帯同する配偶者」を対象と明記していますが、子どもについての記載がありません。
お子さま名義の口座をお持ちの場合は、必ず証券会社に個別に確認してください。
② 出国中は買い増しができません
先ほども書きましたが、積立が数年間止まります。 家計の計画に影響します。
③ 帰国したら「帰国届」が必要です
期限内に提出しないと、NISA口座は停止し、保有商品は自動的に一般口座へ移されます。
行くときだけでなく、帰るときにも手続きがあると覚えておいてください。
手続きが漏れているかもしれない、と思ったら
まず、証券会社に相談してください。
自己判断で放置すると、口座の廃止や強制売却につながる可能性があります。時間が経つほど選択肢が減ります。
証券会社は、こういう相談を日常的に受けています。 気まずく感じる必要はありません。
出国前にやること
長くなったので、まとめます。
- 自分の証券会社が対応しているか調べる — 最近変わったので、古い情報を信じないでください
- 出国前に「非課税口座継続適用届出書」を出す — 出国後では間に合いません
- 保有銘柄と子ども名義の口座は、証券会社に個別に確認する — 一律の答えはありません
最初に書いたとおり、会社はここまで教えてくれません。
わたしが出国したときは、条件が厳しくて継続保有は難しい状況でした。だからこそ、これから出国される方には、ぜひ事前に調べて、出国前に手続きをしていただきたいと思っています。
制度は良くなりました。でも、手続きの期限だけは変わりません。
辞令が出たら、住居や引っ越しの手配と一緒に、証券会社への連絡もリストに入れてください。
証券会社ごとに対応が違い、期限もあります。自分の場合はどうなるか整理したいという方は、お問い合わせフォームからご連絡ください。記事へのご感想やご質問は無料です。
帰国後の進路については、帰国子女の高校受験は「帰る時期」と「帰る場所」で変わりますでも書いています。
※ 本記事は2026年9月時点で調べた内容です。 制度も各証券会社の対応も変更されることがあります。実際にお手続きされる際は、必ずご利用の証券会社の公式情報で最新の内容をご確認ください。
※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の購入や、特定の証券会社の利用を勧めるものではありません。 最終的なご判断はご自身の責任でお願いいたします。
