突発性難聴になるまで
突発性難聴になったのは、公務員として働き始めてから11年目のことでした。
結婚して、夫の勤務地である地域で公務員となり、在職中に息子2人を出産し、仕事と育児を両立する日々でした。
両実家が遠方のため、夫婦2人で仕事と育児をしなければならず、子どもの体調が悪くなったとき等は、ママである私の負担が大きく大変なことも多かったです。
そんな中、子どもたちは、すくすくと成長して今では2人とも小学生となりました。
一方で、私は職場の人間関係で悩んでおり、職場に行きたくないなーと感じたり、仕事から帰るのが遅くなったときは、子どもの宿題を「早く終わらせて!」と言って、優しく見てあげることもできなかったり、「一緒に夜ご飯を作りたい」と言われても、「時間がないから、また今度ね。」と言ってしまっったり、そんな自分が嫌になって、さらにストレスが溜まっていく状態でした。
このまま仕事を続けていいのだろうか。
もっと、自分や家族との時間を大切に生きていく方がいいのかな。
と色々考えていたときに、突然、左耳に水が入ったかのように閉塞感を感じて、ほとんど聞こえなくなって、耳鳴りが始まり、本当に今までの聞こえ方と全然違うようになってしまったので、何ともいえない恐怖を感じました。
次の日、医師から、突発性難聴ですと診断を受けました。
突発性難聴になり、不安になっている方へ、私の体験談が参考になればと思い、詳細について書いていこうと思います。
突発性難聴とは
突発性難聴は、突然、左右の耳の一方(ごくまれに両方)の聞こえが悪くなる疾患です。音をうまく感じ取れない難聴(感音難聴)のうち原因がはっきりしないものの総称で、幅広い年代に起こりますが、特に働き盛りの40~60歳代に多くみられます。
前日は問題なかったにもかかわらず、朝起きてテレビをつけたら音が聞こえにくい、あるいは電話の音が急に聞こえなくなるなど、前触れなく突然に起こることがあります。
聞こえにくさは人によって異なり、まったく聞こえなくなる人もいれば、高音だけが聞こえなくなる人もいます。後者では、日常会話に必要な音は聞こえているため、難聴に気づくのが遅れてしまいがちです。
聴力が改善したり、悪化したりを繰り返すといった症状の波はありません。
また、難聴の発生と前後して、耳閉感(耳が詰まった感じ)や耳鳴り、めまい、吐き気などを伴うケースも多く、耳鳴りで受診したら突発性難聴だったという人もいます。難聴やめまいが起こるのは1度だけで、メニエール病のように繰り返すことはありません。突発性難聴は、以上のような症状を問診で確認したり、さまざまな聴力検査や画像診断を行って診断されます。発症後すぐ治療を受けないと、難聴や頑固な耳鳴りが残ったり、聴力を失うこともあるため、早めの受診と治療開始が大切です。
突発性難聴の原因
音を感じ取って脳に伝える役割をしている有毛細胞が、なんらかの原因で傷つき、壊れてしまうことで起こります。有毛細胞に血液を送っている血管の血流障害や、ウイルス感染が原因であると考えられていますが、まだ明らかになっていません。
ストレスや過労、睡眠不足などがあると起こりやすいことが知られています。また、糖尿病が影響しているともいわれています。突発性難聴の治療
e-ヘルスネット-厚生労働省
治療は、内服や点滴の副腎皮質ステロイド薬による薬物療法が中心になります。また、血管拡張薬(プロスタグランジンE1製剤)やビタミンB12製剤、代謝促進薬(ATP製剤)などを使うこともあります。ストレスの影響が考えられるときは、安静にして過ごします。
十分に回復しない場合や全身投与が難しい場合は、耳の中にステロイドを注入する「ステロイド鼓室内注入療法」が行われることがありますが、その効果に対する評価は定まっていません。
発症後1週間以内に、それらによる適切な治療法を受けることで、約40%の人は完治し、50%の人にはなんらかの改善がみられます。ただし、治療開始が遅れれば遅れるほど治療効果が下がり、完治が難しくなってしまうので、注意が必要です。
いろいろとネットで情報を検索して、早期治療を開始する必要があることが分かりましたが、約60%の人は完治しないんだと知って、とても不安になりましたが、今できることをやるしかないと決心してすぐに治療することにしました。
治療について
突発性難聴発症当日
左耳が突然詰まったようになり、音が聞き取りにくくなる。
発症翌日
休日のため、急病診療を受診
診察、聴力検査より、突発性難聴と診断を受ける。
治療開始は早い方がよいとのことで、ステロイド点滴、内服薬を処方してもらう。
聴力検査の後、左耳に耳鳴りがするようになる。
発症翌々日
再度、急病診療を受診
ステロイド点滴、内服薬を処方してもらう。
昨日より耳鳴りもひどく、難聴も悪化しているように感じる。
耳鳴りはセミの鳴き声みたいな夏の音に、時々ミニカーが走るような音。
連日、睡眠もあまりとれていなくて、疲労感あり。
入院初日
休日明けに、病院に初診予約を取って、紹介状を持って受診。
かなり聴力が落ちているので、最大限の治療をするなら、入院する必要があるとのことで、今日の午後から最低でも2週間入院となる。
ちなみに、発症翌日の聴力検査よりもさらに悪くなっており、左耳の聴力は重度の難聴とのことで、一気に不安が大きくなった。
採血、点滴(血流を良くするもの、ステロイド)をしてもらった。
入院2日目
本格的に治療開始
治療内容は以下の4つ。この治療を入院中、毎日続けることになる。
①安静
②薬物療法:点滴2種類(血流を良くするもの、ステロイド)
③スーパーライザー(星状神経節ブロック)
レーザーで低出力単派長の光線をピンスポット的に暖め刺激して、従来におけ星状神経節ブロックの注射の代わりにされている治療法
首にパッドみたいなものをつけて、3分くらいで終わる。痛みも全然ない。
④高気圧酸素療法
高い気圧環境のなかで、ほぼ100%の酸素を吸入することにより、血液の水分中に多量の酸素を溶け込ませ、通常の20倍もの酸素を組織にいきわたらせる治療。
狭いガラスの装置の中に入り、100%の酸素ガスにより、15分かけてゆっくり気圧を上げて、2.0絶対気圧の状態を60分保ち、その後15分かけて気圧を下げるというもので、約90分かかる。
自分の左耳の細胞に「もう一度、聴力をください。細胞さん頑張って!」とお願いをした。
気圧が上がるときは、耳が痛くならないように耳抜きをする必要があり、気圧が下がるときは、自然に抜けていく。この抜けていく感じが心地よかった。
初日の治療が終わり、少し閉塞感が和らいだような気がする。
まだまだ難聴、耳詰まり、耳鳴りはある。
入院3日目
最初は、左耳を触っても耳を塞いでも、何の感覚もなかったが、左耳を触ったときの感覚が少し出てきたような気もする。
入院4日目
入院してから、初めての聴力検査。
ほんの少しだけど、聴力が動いてきているので、まだまだ先は長いけど、治療頑張りましょうとのこと。
少し希望が見えて嬉しかった。
入院5日目
午前中は、念のため脳のMRI検査へ。
午後から、点滴、スーパーライザー、高気圧酸素の治療をした。
左耳からの音がチリチリと電波信号のようで、音として聞こえない。
外出すると音が大きくて、聞き取りづらい。
こんな状態で本当に回復するのか不安になった。
脳MRI検査の音の影響か、耳鳴りがほんの少し大きくなった気がする。
でも、これだけの治療を受けられることに感謝して、左耳の細胞にパワーを送るようにイメージしながら、治療に取り組むしかない。
入院6日目
朝から天気が悪く、耳鳴りがつらい。
気圧の影響もあるらしい。
先生は耳鳴りはあっても大丈夫だよーと言ってくれたので、少し安心。
今日は日曜日だから、高気圧酸素がないし、ゆっくり過ごした。
自分でできることを始めようと首や肩のストレッチを調べてやってみた。少しほぐれたような気がする。
左耳から入る音が増えてきたような気がする。耳の中を触ったときも、聞こえ方が変わってきたような気がする。
高い音は聞こえるようになってきたが、まだ低い音は全然聞こえない。
入院7日目
耳鳴りは変わらず続き、夜はあまり眠れなかった。
朝から首や肩のストレッチをした。
ほぐれて血行がよくなったから、点滴のお薬も効いてくれるといいな。
高気圧酸素療法、今までとの音の聞こえ方が明らかに違って、涙がでてきた。
治療中は、YouTubeで音楽を聴いたりできて、MISIAの「Everything」のメロディが耳に響いた。キーは高かったが、デジタル音ではなく、ちゃんとメロディだった。
この治療中、耳鳴りも治まるし、好きかも。
入院8日目
耳鳴りもあまり気にならなく眠れた。
入院してから3回目の聴力検査があった。
また回復していたので、すごく嬉しかった。
高気圧酸素療法では、最初は耳抜きをしても左耳は何も感じなかったが、今日は耳抜きをする感覚が右耳に近くなってきた。気圧の変化に対応できるようになってきたのかもしれない。少し嬉しい。
高いメロディは聞こえるようになってきたが、低いメロディはまだ聞こえない。
入院9日目
昨日から点滴に苦戦。なかなか入らなくて失敗されてしまう。
毎日の点滴が億劫になるけど、頑張るしかない。
今日は採血もあった。
ステロイドの影響もあり、胃が重く感じた。食べる量を減らしてコントロールしていこうと思う。
体力が落ちてきているが、今は耳に集中して頑張ろうと思う。
先生の診察では、順調だから引き続き頑張りましょう。
頭部MRIも問題ないとのことで安心した。
お風呂に入ってるときの詰まっている感じがマシになってきて、ドライヤーから聞こえる音も変わってきた。触った感じも音の感じ方が変わってきた。
酸素療法の左耳抜きもできるようになってきたし、少しずつ回復を実感できた。
耳鳴りはまだ残っていて、少しこもった感じはまだある。
入院10日目
今日の点滴はスムーズにいって一安心。
薬の副作用か、胸あたりが少し重いと感じることもあったが、ご飯の量を減らしたら、改善したような気がする。
薬の副作用の不安が少し和らいだ。
耳はつまり感が和らいでいるように感じる。
音はまだ少し籠っているが、聴こえる音が増えてきている。
高気圧酸素療法では、左耳も右耳の感覚に近くなってきた。耳抜きや自然に抜ける空気の感じなど。
音はまだ右より小さく感じる。
入院11日目
聴力検査で、ほぼ右に近いところまで回復。
本当に嬉しかった。
診察の結果、予定通り2週間で退院できることになった。さらによくなるように、残り期間も頑張って治療しましょうとのこと。
本当に耳の細胞のチカラを信じて頑張ってよかった。
今日は気持ちにも余裕をもって過ごせた。
あとは、もう少しの聴力、耳鳴り、籠り感のみ。
入院12日目
高気圧酸素療法の記念すべき10回目。
初めてのときと全然感覚が違った。
加圧中の左耳の違和感もなく、ほとんど同じように音も聞こえる。
減圧していくときの、耳から空気が抜ける感じが快感で好き。
私的には、この治療が1番効果を発揮したんじゃないかと感じている。
退院まで、あと2回受けられることになった。
残り3日、最後まで治療頑張って、完全完治して退院したい。
入院13日目
耳鳴りもほとんどなくなり、声がこもる感じもなくなった。ほぼ完治に違い状態に感じる。
ここまで回復したことに感謝している。
入院14日目
だんだん耳鳴りが気にならないようになってきた。
今日の夜が最後と思うと、何に対してもありがとうと感じる。
最初は、シャワーの時間、音が大きく、耳がこもってしんどかった。ドライヤーでも左からは全然音が聴こえずに、落ち込んでいた。
けど、最後のシャワーは、耳がこもることもなく、普通に浴びることができた。
それまで当たり前だったことが、すごくありがたく感じた。
明日は、最後の治療を頑張る。
入院15日目 退院
聴力もほぼ完全に回復して退院。
看護士さんは頑張って治療したからだよって優しく声をかけてくれた。
嬉しくて涙があふれてきた。
当分は無理しないでねと言ってくれた。
最大限の治療を受けることができて、本当に恵まれてたと思う。
健康に感謝しながら、これからの時間を大切に過ごしていこうと思う。
まとめ 〜突発性難聴を経験しての感想〜
最初は、約30%の人が回復しないと言われていて、難聴の程度も重度であったことから、回復しないのではないかと不安で仕方なかったです。
でも、回復を信じて治療に前向き取り組めば、「難聴の程度が重度であっても、回復することがあるよ。」ということを伝えられたらと思います。
今後は、ストレスのかからない生活を心がけて充実した日々を過ごしていきたいです。
長い文章になりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。